道路と沿道の景観形成に関する基本理念、実践的な規定と実例集。
景観とは、ある対象を人間が見ることによって成立します。 「景観とは、人間をとりまく環境の眺めにほかならない」(中村良夫)とも言われます。 一方、「景観は見ることを契機とする心的現象とされる」ことから、 景観は主観的であると言われますが、景観(美)には客観性や必然性、社会性があります。 さらに、「景観はセンス」とも言われますが、景観整備は知識によって理解できるものです。
●美しさや快適さへの欲求は、人間の本能 人間は誰しも美しさへの欲求を持っています。 四季折々の美しい北海道の景観は、人々に精神的な豊かさを感じさせてくれます。 景観は人間の生存にとって価値のあるものです。
●古来より、美観(景観性)は社会資本の基本条件 古くから、美しさは付加価値ではなく、機能性(用)や安全性(強)と同じく満たすべき必要事項とされてきました。 国土交通省の「美しい国づくり政策大綱」でも、「美しさの内部目的化」が掲げられています。
●社会資本は公共空間で見られる対象 人間は、約80%を目から情報で認識しているといわれます。公共空間で不特定多数の市民から、長期間にわたって見られる土木施設では、「景観検討は不可欠」です。
●北海道における道路景観の重要性と責務 主な交通路である道路からの景観は、その地域の印象に大きく左右されます。 道路は、それ自体が視対象となるだけでなく、重要な視点場(地域を眺める窓)です。
美しい道路づくりを考えることは、その地域や国の環境の美しさを考えることとほぼ同義となる。 道路という文明の装置も、美しさという価値が備わっていなければ、社会資本としてストックされない。 「道路デザイン指針(案)」より
視対象の美しさやデザインの質、全体の調和などが影響しますが、一方、人は目に映るものを等しく見ていません。みたいものを見ます。このような視点からの良い景観とは、「見たいものを見やすくする」ことでもあります。反対に、悪い景観とは「見たくないものが目立つ」ことです。電線電柱の景観への影響は、この事例になります。 さらに、適度な引きにより「見せたいものを印象的に見せる」ことや、地域にとって見せたいものが何であるか、考えることが重要です。このように、景観整備は知識で理解できます。 また、良い景観とは単なる美醜で判断されるものでなく、人間にといって有用なこと、好ましいことがよい景観とされます。
良好な景観形成のためには、地域の景観を理解することが大切。北海道の景観の特徴を知ることも、その一つである。 北海道には、道路や河川などの社会資本の背景に世界的に見ても魅力ある景観が存在する。また、長く雪も多い積雪期を有しながら、緯度があまり高くないため、“明るい冬”であること。その“冬がつくる暮らしの景観”も北海道の特徴である。 本州との比較では、雄大な自然が身近にあることや、都市間の距離が長く、都市部と農村部・自然域など土地利用がハッキリしていることなどが挙げられる。 一方、海外、特にアジア太平洋地域からみると、むしろ短い距離で移動中に変化に富む景観が存在すること、明瞭な四季があることや、都市から身近に山並みが見られることなどである。 したがって、景観整備ではこのような北海道の恵まれた景観を活かすことが重要となる。
長期に渡って一貫した考えで良質な道路景観の形成のためには、景観形成の方針とルールを整理した、道路景観形成マスタープランの策定が有効。
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