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戦略研究

北海道における美しく快適な沿道環境の創出に関する研究

北海道では観光は重要な産業となっており、美しい景観などを求めて国内外から多くの観光客が訪れ、特に海外からの観光客のドライブ観光も急増しています。また、シーニックバイウェイ北海道の本格展開など、沿道景観の向上に対する社会的ニーズが高まっています。

そこで、今研究では、主な移動経路であり、重要な視点場ともなっている道路景観(内部景観)について、道路景観の評価手法や景観の向上方策の提案、及び景観や環境改善に資する道路緑化手法の提案などを行っています。

これらの研究を通じて、積雪寒冷地での沿道景観の向上に貢献することを目指しています。

 

■景観向上策

北海道の郊外では、移動中に世界レベルの美しい自然景観や農村景観を道路から眺められるところが数多く存在しています。しかし、安全・円滑な交通の確保や維持管理を目的に、防雪施設をはじめ多種多様な道路付属施設が存在し、同時にこれらの施設がその背景に広がる美しい景観を阻害していることも多いのが現状です。

このような背景から、本研究では、必要な道路機能を確保しつつ、施設を減らしていくことを目指した"引き算による景観創出"をはじめとして、積雪寒冷地における効果的な道路景観の向上を目的にコスト低減や維持管理のしやすさ景観保全にも繋がる具体的な景観向上策の提案を行っています。これらの成果を基に「道路景観データベース」や「北海道における道路景観チェックリスト(案)」などを策定しています。

 

▲背景が美しい北海道の道路景観(実際)を阻害する道路付属施設(右)

 

▲道路景観データベース

 

▲北海道における道路景観チェックリスト(案)

 

■景観評価

近年、公共事業における景観向上の取り組み事例の増加から、道路景観評価の必要性が高まっており、関係者との協議等による合意形成の必要性が増加しています。しかし、道路景観の評価手法が確立されておらず、また統一された指標や目安もないため、景観検討や合意形成に苦慮しています。そのため、道路景観の評価手法を人の主観的な感覚をある程度反映する指標として用いることができれば、景観検討や合意形成を円滑に進めるために有効なツールとなり得ます。

そこで本研究では、景観検討や合意形成のためのツールとして適用できる道路景観の評価手法の提案を目指しています。

 

道路景観評価手法の一例(人間の印象評価と定量評価手法を組合せたもの)

SD法による印象評価を反映させ、フラクタル解析における画像認識方法の改良を行い、適用性が向上しました。

 

○画像認識方法の改良

 

○比較結果

 

■道路緑化

街路樹やのり面植生などの道路の緑は、沿道景観や環境に大きく影響します。しかし、道路緑化に関しては植栽用地の確保や樹種選定など種々の問題を抱えており、特に維持管理については、植栽後長期に渡ることから多くの課題があります。緑化の効果が十分に発揮されるには維持管理の質が問われますが、昨今の維持管理費削減により、下草刈りの頻度や樹木の剪定回数を減らすため過度な剪定を行うなど沿道の緑の機能を損なわせている状況も見られます。さらに、積雪寒冷地では厳しい気象環境や機械除雪での損傷などによる生育不良、自然遷移が進みにくいなどの地域的な問題もあります。

そこで、本研究では、景観緑三法の施行や社会的要請の高まりを背景に、景観や環境、維持管理コストの縮減にも寄与する道路緑化の整備手法の提案を目指しています。

 

▲街路樹が与える効果と影響

 

▲過度に剪定された街路樹

 左:右側の自然樹形の樹木も左側の樹木のように順次剪定され、夏季に緑陰が消失している
 右:電線を避けた過剰な剪定、6月でも緑が無い

 

 

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